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宮城県産一番摘み海苔「濃艶2023」今年も登場 ブランド力強化の裏側 ~マルタマ佐々木海苔店~ 

2020年に誕生以来、毎年12月に限定数販売される「濃艶(のうえん)」<マルタマ佐々木海苔店(山形市)>が今年も登場。「濃艶」はその名のとおり「つやっぽく美しい風味と色合い」が魅力で、2023年11月に収穫された宮城県産一番摘み海苔の最高クラスのものを厳選。今年は11月半ばに栄養塩が増え、海水の温度がほどよく低下したことから「味」「香り」ともに良質で、一番摘みならではの食感とくちどけは例年以上。「宮城の海苔の美味しさを伝えたい、震災で苦労された生産者を助けたい」そんな想いも込められています。※23年12月25日に完売しました。

23年12月13日の河北新報では「ノリブランド波に乗る」と題し、濃艶だけでなくここ数年の取り組みを紹介頂きました。

231213_河北新報

また、23年12月22日には山形新聞でも紹介されました。

同社には、「工夫により余裕時間をつくり、短期と長期の新しい組み合わせ実行。意図ある情報発信と営業活動を継続し本業(業務用卸)の収益増を目指す」を経営目標に、2021年から業務プロセスの改善を行い、ブランド力強化と小売を活かしたBtoBの販路拡大を重点的に支援し収益力向上に貢献させて頂いています。

はじめに業務プロセスの改善を実行。例えば、法要の際に発注が急増する香典返し用海苔について、従来は発注数が読めないことを理由に注文が入ってから全数手作業で包装を行い、翌日の納期に間に合わせる対応が常態化していました。当然無理な数を短期間で行うため他の業務が滞りがちに。発注が数日集中すると期間中の情報発信も滞り、数か月後に立ち上げ予定の取り組みも遅れるなど悪循環に。そこで過去の受注状況から1回あたりの平均発注量などを算出し、安全在庫を持つなどの工夫を実行。急な対応にも慌てない余裕時間の創出を支援しました。

その上で、「ブランド力強化」(※多額の費用を払い、単にロゴや服装をカッコよくすることではない)×「売れ続ける仕組みづくり」(※高度なITツールを導入しいきなりマーケティングオートメーションといった小難しいことをしない)を「身の丈」にあった内容で「短期」と「長期」施策に分け実行

短期施策については、

(1)毎年12月になると話題になりやすい「濃艶」のような季節性ある企画や話題の獲得につながる企画づくり

(2)時期が被らないよう催事に出展し、新規顧客や新しい連携先とのネットワーク構築。次に述べる長期施策を補完する役割を担います。

マルタマ佐々木海苔店催事

長期施策は、(3)業務用卸には出せなかった「カケ」や「ちょっとした破れ」が出てしまったものを廃棄や自家消費ではなく「海苔屋さんが食卓で食べるおいしい海苔」ブランドを立ち上げ売れる商品に。直営店、通販だけでなく山形市域の食品スーパーや鮮魚店、観光地の温泉旅館館内の売店にコーナーごと提案し常設販売を実現。

(4)「〇に玉(マルタマ)」は小学生でもわかる表現。同社とお客様を含むステイクホルダーとの接点を無用に増やすことなく、売り場やパッケージ、ユニフォーム類などシンプルかつ徹底的に統一するブランディングの基本を強化。賑やかな売り場ではあえて色を絞ることで逆に存在感を発揮。ナショナルブランドより高い値段での販売と固定客の獲得に繋がるよう設計。

moh’z (山形市元木)店頭にて

(5)ちょっとした手土産にそのまま贈れる「マルタマ黒袋」、年間を通じて宮城県産のワンランク上のおいしさを提案する「マルタマゴールド」などのアップセル、クロスセル商品の充実。

(6)すべての行動が自社名の存在認知拡大につながるよう「一目見たらマルタマ佐々木海苔店とわかる公式ウェア」に身を包み営業活動。

(7)(6)については直営店、通販、催事、スーパー店頭でグッズ販売も行い「ファン」の獲得・維持に努める。グッズ開発についてはヤマガタニューレトロプロジェクトと連携。ヤマガタニューレトロプロジェクトの販売活動に同社の商品が展開されることで、全く異なるルートでの認知やファン獲得効果も。

(8)自社でできる情報発信については、特にSNSの更新が滞らないよう「海苔を接写で撮って解説する」など継続しやすい企画をつくり実行。23年8月には「映えない件」で月曜から夜ふかし(NTV系)で紹介。

経営目標が不明確で業務改善の工夫もなく実行してしまうと単なる「足し算」になってしまいます。特に人的経営資源に乏しい地域中小企業は、経営者や社員がマルチタスクに業務をこなしている傾向が強いため、弱みが放置された状態で強みだけにフォーカスし新しいことを足してしまうと早々に「業務過多」に陥ります。

また、対価を支払いロゴの変更やITツール類など手段の導入をしても十分に機能せず金銭的負担だけ残るといった事例も多いので注意したいです。モノや手段が既に存在し「どこに向かったら良いのか」「どう使ったら良いのか」といった相談が多いのが実情です。何事も先に目標や方向性といったゴールを決めること。そこに辿りつくアイデアと手段の検討はその後です。

新しい取り組みで成果につなげるためには、目的を明確にすること(目的を見失わないようにすること)。そして、個々の施策と施策が掛け算になるように設計。それらを円滑化させるためにも、強みの中の強み(コアコンピアンス)を伸ばすと同時に、弱みの中から克服できる弱みを見つけ改善することがとても重要です。

写真提供 マルタマ佐々木海苔店

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